No.4. ウイーン国立歌劇場 2016-~17シーズン
* カルメン
* 2016.9.13
* Philippe Auguin | 指揮
* Franco Zeffirelli | 演出
* Franco Zeffirelli | 舞台
* Leo Bei | 衣裳
*
* Elena Maximova | Carmen
* Brandon Jovanovich | Don Jos?
* Clemens Unterreiner | Escamillo, Toreador
* Cristina Pasaroiu | Micaela
* Hila Fahima | Frasquita
* Ilseyar Khayrullova | Merc?d?s
* Alexandru Moisiuc | Zuniga
* Orhan Yildiz | Moral?s
* Joseph Dennis | Remendado
* Mihail Dogotari | Danca?ro
しばらくぶりヴィスコンテイの舞台を見た。大筋は半世紀変えていない伝統的な素晴らしくゴージャスな舞台だ。全幕ともに、舞台を上から下まで幅広く空間を使い、リアリティに夢と詩情を溢れさせた秀逸なものである。
1幕のカルメン、登場するところから、ホセを誘惑する場面まで、カルメンを何かお嬢さんが演じているようで、魅力的悪女の欠片も出てこない。男たちがカルメンに注目するその大事な存在感がない。声も出てこないしハバネラは何の工夫もなくひどく平板に歌ったものだから、このタイトルロールでは先が思いやられてしまった。ホセは大柄で舞台映えはするが、 肝心のレガートがでこぼこしていて安定感がなくおまけに音程も定まらずで、なぜこの人が?と思われた。ミカエラは声が透明、張りもあって歌の上手さも光っていて存在感があった。
2幕 カルメンが酒場リラ・パステイアでカスタネットを鳴らしながら彼の為に踊る。その時帰営ラッパが聞こえてくる。帰ろうとするホセに怒って悪態をつくカルメン。ホセは牢に入れられていた時ずっとお前のことを想っていた、とカルメンに吐露。重要なシーンだ。だが残念、カルメンの声が痩せているし演技力もないのでオペラは集中力を欠く。またアリア 「花の歌」では歌の上手さが微塵も感じられない。アリアの最終で高音を楽譜に忠実に弱声でトライしたのは良かったが、さしたる魅力は出ずじまい。
エスカミリオはいきなり朗々と歌わなければならない闘牛士の歌、やはりこれは難しい曲である。最初は声が詰まってしまっていた。それでも徐々に調子を出してきた。たっぷりした幅広いの音が豊かに出てくるのもまずまず良い。納得できる声を出すバリトンであった。
4幕の闘牛場前前での場面。ここへきてホセは一気にその真価を見せた。その大柄な体格を舞台いっぱいに可動範囲を広げて、カルメンの愛を求め、そして絶望し、殺しに至るまで、素晴らしい演技力を見せた。スポーツ選手か何かのように力強い舞台となった。カルメンは最後にはある程度の声を出してきたがやはり物足りないものがかなり残ってしまったのだが。オーケストラは大詰め 最終場面でそれこそ死ぬ気の戦いを見せ、高揚した音楽は一気にこの悲劇を現実のものにした。
指揮者はこのオペラを終始かなりのインテンポで持っていった。指揮が情緒的に流れる所は一切ない。それは良いのだが音楽を余りに詰めて行ってしまうと、伸びやかに解放される場面がほとんど出ないのは?これはこれでトスカニーニのように簡潔でとても良い反面、もっと情緒的に自由に美しい旋律を歌わせて欲しい場面もあった。この指揮者は昨夜はバタフライを振ったのだった。やはりそこでも自由な流れがもう一つ、わざわざわざ窮屈にしてるようにも聞こえてしまったのはやや惜しまれる。
Comments