私は1970年代からウイーンで声楽の研究を続けてきました。
当地に暮らしたことのある日本人なら誰しも経験することですが、しばらくそこに住んでいると、季候のこと(アルプスからのフェーン現象)とか人間関係で言いようのない閉塞感、重圧感に襲われることがありました。
そうしたときに私はしばしばウイーン南駅から夜汽車のLiegenWagen(6人乗り寝台のコンパートメント)に乗りました。翌朝8時には左側に海が見えてきて、潮の香りが懐かしいヴェネツィアに着けるのです。ヴェネツィアでは 車の騒音とは無縁な世界で 海の風にあたり、親切なイタリアの人たちと交わって生気を取り戻すことができました。
この30号の絵画は一水会の宮本裕之氏の作品です。
ごく最近、作家ご本人から買わせてもらって自宅に飾りました。
ポピュラーな構図だとは思いますが、大運河の水の色、建物の古びた存在感、全体に現れる優しさ は作家の特色でありまして 毎日嬉しく眺めています。
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